ラスベガスの夜
私は海外で暮らした経験がありますが、その間、自分がアジア人
だから・・・ということで、差別的な扱いを受けたり、嫌な思いをした
ことはなかったのですが、実は一度だけ、嫌な思いをした経験が
ありました。
それは、仕事でラスベガスに行った時のことです。
あるパーティに招かれて、ちょっとガンバって慣れないドレスを着
て、タクシーに乗って、会場となるホテルへと向かっていました。
タクシーの運転手さんは、気のいい黒人のおじさんで、色々と話
をしてくれました。 直接ホテルに行ってもらおうと思ったのですが、
ホテルの直ぐ手前で、かわいいチョコレート屋さんを見つけたので、
みんなに買って行ってあげようと思いつき、タクシーを下りました。
「グッバーイ、マイリトル・プリンセス!!(彼らは、社交辞令でよく
こういうことを言って喜ばせてくれます)」
と、そのおじさんが窓から大きく手を振っていました。
お店に入って、大好きなチョコレートのラッピングを抱えて出てきた
その直後、後ろから大きな声で、
「黄色いサルに、ドレスは似合わないってっ!!」と、女性の声が
聞こえました。
驚いて振り返ると、若い男女数名のグループが、少し酔った感じ
で私の方を見つめて、中指を立てて笑っていました。
英語が分からなかったふりをして、切り抜けよう・・・と思う間もなく、
さっきのおじさんが、わざわざタクシーから下りてくると、彼女に
向かって、
「お姉ちゃん、あんた、自分に魅力が無いからって、ひがんじゃぁ
いけないなぁ・・・」
と言うと、また私をタクシーに乗せてくれました。
「・・・あんたがあんまりキレイだから・・・ヤキモチ焼いてんだよ!」
そう言って、ホテルまで送ってくれました。
ホテルまでは、信号2つほどで、あっという間に着いてしまったの
だけれど、知らない間に涙が止まらなくなっていて、おじさんは、
黙って私に付き合ってくれました。
しばらくたって、信号2つ分のお金とチップを渡そうとすると、
不思議そうに様子を伺っていたドアマンをおしのけて、
車から下りてきたおじさんは、後部座席のドアを開けて、私を
大げさにエスコートするそぶりで、おどけて見せました。
そして、
「さっき充分もらってるから、・・・さぁ、行っといで、プリンセス!」
と言うと、ウィンクしました。
あの時のおじさんがいなかったら、私はラスベガスが嫌いになって
いたかもしれません。 あのおじさんのお陰で、今ではあの時の
できごとも、HAPPYな思い出の一つとして心に残っています。
「night_in_las_vegas.mp3」をダウンロード
Song : Biltone 「Let Sweet Acceptance Shine」
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